ENCOUNTERS
ワイオミング州デビルスタワー
Devil's Tower, Wyoming, U.S.A.
Photo, essay by T.T.Tanaka
Visited in June 17,2019
マグマ in the sky
大草原の中に忽然と現れた巨大なタワー!
Devil’s Tower(デビルスタワー)。
実はDevilは「新大陸」にやってきた人たちの誤訳で、先住民たちは聖なる生きものである
「熊の爪痕」と呼んでいて、Devil(悪魔)とは無縁。聖地で色々な部族の人達が祈りに来る。
命を感じるところ。
地面から300mもある岩はかつて地中から噴出したマグマの跡なのだ。ここにいると昔とも
宇宙ともつながるような不思議な気分になってくる。
スピルバーグは「未知との遭遇」で宇宙人とのシーンをここで撮影したのだった。
コンドル
マグマはいくつもの柱になってずっとずっと伸びてそのまま空にささっている。
大きなコンドル(turkey vulture)が青い空に舞っている。
聖なる煙の輪
The Circle of Sacred Smoke—アメリカ先住民族の女性が昔、パイプをささげた。
みんなのお祈りの時の聖なる煙。武藤順九さんはこれにちなんで作品を作った。
彼は東京芸術大学を卒業し20代でイタリアにわたり、石の彫刻を作り続けてきた。
このSmoke ring、ねじられたメビウスの輪みたいで、とても石で作られたとは思えない。
彼は、人が自然を征服するのではなく、私達は自然とつながった命なのだととらえている。
作品は自然の妖精。素材の大理石は大昔からの生きものたちの歩みが凝縮されたものでもある。
彼の作品はローマのバチカン、インドのブッダガヤにも永久設置されている。
人種、宗教、国を超えて愛されている。(※2019年6月より昭和の森にも9作品設置—彫刻公園)
アメリカ最初の国定公園Devil’s Towerの正面に2008年この作品は永久設置され様々な人々に
愛されている。
煙の合間に「塔」が見え隠れ。曲線の光と影が浮かんできれい。
Smoke ringが空の雲と会話しているみたい。
太陽が動いていくとどんどん表情も変わって面白い。
子供たちをつれたファミリーも、シニアも、カップルも、お祈りのインディアンたちも次々にやってくる。
みんなで彫刻とDevil’s Towerを一緒に撮ったり、彫刻の感想をそれぞれ言ったり、彫刻に触れたり、
そのまわりをかけっこしたり、まわりの砂を素手でもりあげて塔をつくってみたり、彫刻の中に顔を
突っ込んだり。。わあわあやっている。
日本人の作品がこんなにみーんなのものになっているのを見ると本当にうれしい。
感動してしまった。アートってこうありたい。アートがみんなのものになると幸せだ。
お祈りをしているインディアンのカップル。そこにやってきたおじさんは彫刻に興味津々。
「こんちは~。キャンプ中なの?」
「そうそう。彼女ときてるの。君はどこから来たの?」
「日本から~。その作者と一緒の日本人なの~」
「え~! 作者は日本人なのかい? この作品いいねえ。大好きだよ。」
「それは嬉しいですね。いいキャンプしてくださいね~」
「はいよ~」 彼は去っていった。と思ったら、3分後にあわてて僕のところに戻ってきた。
「僕の写真撮ってくれる? ね、彼に、僕の写真と一緒に最高だったって伝えておくれ~」
「うん。じゃ作品とDevil’s Towerを後ろに手を振ってにっこりしてくれる?」
「おう。こんな感じかい?」
嬉しい嬉しい時間だった。
アートと自然と人々と
雲の流れをぼーっと見ているとあっという間に影が長くなってくる。
女性たちのシルエットも美しい。
「塔」と「彫刻」を思わず振り返ってしまう。
そうそう。ここから立ち去りがたいんだ。
でも、そろそろ行かなきゃ。
もうすぐ陽が沈む。、
陽が落ちてしまう。
道路の脇に思わず止まってしまった。
空には藍色の雲。そしてDevil’s Towerのシルエットが赤い空に浮かび上がる。
大草原の日没は宇宙につながっていた。
あのJunkyuリングに乗っていきものたちも、人々も、宇宙人に会いに行くのかな。。
With Muto Junkyu’s, diversity is here.
アメリカ先住民達、様々な市民、そして国内外の旅行客も次から次にやってきます。
老若男女。子供たちも。順九さんの作品に触れ、思い思いの時間を過ごしてゆきます。
先住民たちの聖地、Devil’s Towerを背景に、素敵な時間が流れています。
パークレンジャーの職員たちはSmoke Ringの作品の存在は頭にしっかり入っていて、
広大な空間の中の場所をすぐ教えてくれました。
公園から数十分離れたところに住む農園の人達も、レストランの人達も、B&Bの人達も
彫刻のことは知っていました。日本人の名前は言えなかったけど。。
順九さんは僕の友人だというと、もう大喜びで、
「素晴らしい、彼は設置のあと、来たの?」
「彼にわたしたちのこと伝えてね~」と何人もに言われました。
僕は子供たちが、順九さんの作品と、Devil’s Towerをあちこちから眺めて、お母さんや
お父さんとお話しして、自分たちで地面の砂をいじったり、作品にふれたり、走り回ったり
していたその光景が大変うれしかったです。
作品の前のベンチに長い時間座って祈りをささげて帰っていったインディアンのカップルも
印象に残りました。
作品をみながら大陸の草原の中、いろいろな命のこと、そして命と宇宙とのつながり、
そして時の流れを感じることができました。
フォトグラファー、エッセイスト; T.T.Tanaka
T.T. Tanaka’s profile
兵庫県芦屋市生まれ。現在は熱海に住む。幼少期, 父の影響から写真を始めた。
アメリカ, フロリダ州在住経験をはじめ, プライベートやマーケティング業務を通じての
国内外の訪問国は40ケ国を超えた。
人々の日常生活においてこそ素晴らしいアートシーンが自然に創造されているとの考えの下,
地球上の様々な所で撮影を続け, 受賞作品も多数。
2016年より写真集 ”ENCOUNTERS”シリーズ出版(日本カメラ社)。受賞作品のみで作ったI,
アメリカの大草原ネブラスカのII, グリーンランドのIII, ウクライナのIV, カリブのV, ラトビアのVI,
台湾のVIIが既刊。写真ファン以外の広い層からも好評で, 2019年12月には日本経済新聞にて
BEAUTIFUL BOOKSに選ばれた。
日本での展示会の他, 2018年にはパキスタンのスラムエリアでのJICAと協力して子供たちへ
写真を使った授業, 日本文化センターや大学における展示/ワークショップを行ったウクライナ
ではT.T.Tanakaの活動をとりあげたTV番組制作・放映, 2019年3月には写真とピアノのコラボ
による昭島の魅力再発見プロジェクト「ENCOUNTERS in 昭島」を開催した。国内外の学校や
病院他, 様々な活動を精力的に展開中。
本名、田中廣
T. T. Tanakaは子供の時からやせて身長が高かったのでついたニックネーム, 東京タワーたなか
ホームページ; https://encountersweb.com/
Email; tanakauf@xug.biglobe.ne.jp Instagram; tokyotowertanaka
anna magazine “Container”月刊コラム “旅はENCOUNTERS” 執筆連載中